更新日:2024.08.30
未払い養育費の回収に悩む方は、やはり女性が多い傾向があります。これは、令和3年の厚労省の調査において、父子世帯の平均年収426万円に対して母子世帯の平均年収は、236万円と半分以下の金額となっていることからも明らかです。
未払養育費の問題について悩んでいるけれど、費用の面で相談ができないという方も少なくありません。
そこで、この記事では、弁護士に無料で相談する方法、さらには、弁護士の選び方についてもご紹介いたします。
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。
子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住、教育、医療などにかかる費用がこれに当たり、子どもを監護している親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。
なお、離婚によって親権者でなくなった親であっても、子どもの親であることに変わりなく、親として養育費の支払義務を負います。
つまり、養育費とは、子どもの生活と将来を守るために支払われるべきものなのです。
しかし、厚労省の調査によれば、母子家庭の子どもの約7割は養育費を受給できていません。
参考:令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要(厚生労働省)
このことは、個別の家庭においても大きな問題ですし、子どもが教育を受ける機会を失う可能性があるという点においては、社会全体として考えて大きな損失を生む重大な問題であると考えております。
強制執行とは、支払義務があるのに支払をしない債務者に対して行う手続きで、裁判所を介して行われます。
強制執行の申立てをして裁判所から許可がでると、債務者の持つ預金や給料、不動産などを差し押さえることができます。
ただし、強制執行をするためには、債務名義という強制執行をするための書面が必要となります。
債務名義は、請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書で、調停調書、判決書、和解調書、公正証書(強制執行認諾文言付)などが該当します。
この債務名義がない場合には、まずは債務名義を作成するところからスタートする必要があります。
強制執行は、強力な手続きですが、デメリットもあります。
養育費の回収問題に関する強制執行には、以下のようなデメリットがあります。
強制執行手続きは、他人の財産を一方的に差し押さえたりする手続きとなりますので、手順が厳格で、複雑です。民事訴訟法や民事執行法といった法律の知識が求められます。
一般の方が自分で行うには難しい手続きであるため、弁護士に相談・依頼する必要性が高いと思われます。
先ほどご紹介したとおり、債務名義という書面が必要となります。
離婚をしたときなどに養育費について取り決めをしていない場合や、取り決めはしたが、その内容を公正証書(強制執行認諾文言付)や調停調書にしていない場合などには、まず債務名義を作成する必要があります。
強制執行は、相手の財産を差し押さえることができる強力な手続きであるがゆえに、相手方との人間関係を悪化させる可能性があります。
強制執行の申立てをしても裁判所に必ず認められるわけではありません。
基本的に弁護士費用・申立にかかる実費は申立人の負担となるため、認められない場合は費用倒れになってしまう可能性があります。
弁護士に依頼する際には、よく弁護士と相談してから行うとよいでしょう。
裁判所が認めた場合であっても、必ず全ての債権を回収できるわけではありません。
たとえば、元パートナーが過去に利用していた銀行から別の銀行へ預金を移してしまっていた場合などは、空振りになってしまう可能性があります。
このような場合でも弁護士費用・申立にかかる実費は、申立人の負担となってしまいます。
強制執行をするために必要な書類は以下のとおりです。
(1)表紙、(2)当事者目録、(3)請求債権目録、(4)差押債権目録の4つが申立書のセットとなります。
債務名義の正本が必要です(謄本では強制執行はできません。)。
また、債務名義によっては執行文(「債権者○○は債務者××に対し,この債務名義により強制執行することができる。」等と書かれた用紙)がついているかどうかの確認が必要です。
債務名義の正本又は謄本が債務者に送達されたことの証明書です。
この証明書がないと強制執行ができません。この証明書は、債務名義を作成した裁判所や公証役場で発行可能です。
例えば、元パートナーの預金債権や、勤務先からの給料を差し押さえたい場合には、その預金債権のある銀行や、元パートナーの勤務先の法人の商業登記事項証明書(代表者事項証明書で可)が必要となります。
また、この商業登記事項証明書は、差押命令を申し立てた日から1か月以内のものである必要があります。
例えば、債権者1人、債務者1人、債務名義1通の場合は4,000円が必要となります。
裁判所から債務者等に対して書面を郵送する必要があるため、郵便切手が必要になります。
申立内容や債務者、第三債務者の数によって500円から1円の切手の必要な枚数が決まっています。
債務名義を作成してから時間が経過していると、ご自身や元パートナー(債務者)の住所、または氏名が、債務名義に記載された住所・氏名と異なっているケース(引っ越したり,旧姓に戻った場合等)も多いはずです。
その際は、住民票、戸籍謄本、戸籍の附票などの公文書を用意し、債務名義に記載された住所、氏名と、現在の住所、氏名のつながりを明らかにする必要があります。
相手方が、どこに、どのような財産を、どれくらい持っているか?という情報や、相手方がどこに住んでいるのか?といった情報が必要になります。
たとえば、
といった情報が必要となります。
なお、この点に関しては、2020年4月1日から「改正民事執行法」が施行され、以前よりも財産調査が容易になりましたので、弁護士に相談してみると良いでしょう。
強制執行をするためには申立てが必要となることから、自分で進められるのか気になる方もいらっしゃるようです。
仕組みとしては可能ですが、先ほどご紹介したとおり、そもそも手続きが複雑ですし、民事訴訟法や民事執行法といった法律の知識が必要となります。一般の方が自分で行うには難しい手続きだと思いますので、弁護士に相談・依頼することが一般的です。
稀に、法律相談を利用して、やり方を聞きながら自分で申立てをしたいという方もいらっしゃいますが、相談だけを引き受けてくれる弁護士は、あまりいないように思います。
現在の弁護士費用は自由化されており、各弁護士(法律事務所)によって、費用は様々です。
ただ、かつて一律だった頃の基準(旧日本弁護士連合会報酬基準)を、現在も利用している弁護士が比較的多いため、その基準に沿って試算します。
例えば、経済的な利益の額(未払養育費の金額)が300万円であると仮定した場合は、次のような計算になります。
強制執行着手金相場:12万円前後(経済的な利益の額300万円×8%×1/2)+実費
強制執行報酬金相場:12万円前後(経済的な利益の額300万円×16%×1/4)+実費
民事執行事件
※本案事件と併せて受任したときでも本案事件とは別に受けることができる。この場合の着手金は、訴訟等の事件の3分の1
※着手金の最低額は5万円
■訴訟事件(手形・小切手訴訟事件を除く)・非訟事件・家事審判事件・行政事件・仲裁事件(着手金)
事件の経済的な利益が
■訴訟事件(手形・小切手訴訟事件を除く)・非訟事件・家事審判事件・行政事件・仲裁事件(報酬金)
事件の経済的な利益が
海外では敗訴者負担制度などが導入されていますが、日本においては原則として、申立人が弁護士費用を負担する必要があります。
したがって、強制執行の申立て後、申立て自体が認められなかった場合や、強制執行の申立ては認められたものの債務者に財産を隠されてしまい空振りに終わってしまった場合などは、費用倒れになってしまう可能性があります。
実際に申し立てる前に、弁護士から見通し等の見解を聞いたうえで、申し立てるか否かを判断する必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
強制執行という手段を用いて、養育費の回収を行うことを想定し、メリットとデメリット、必要な情報や書類などについて解説させていただきました。
強制執行は、強力な手続きである一方、その分申立人にかかる負担も大きくなりますので、頼りになる弁護士によく相談されると良いでしょう。
なお、当事務所の未払い養育費の回収には、大きく分けて5つの特徴があります。
養育費の回収にお悩みの場合は、ぜひ、お気軽にお問合せくださいませ。