ホライズン法律事務所 代表弁護士
東京弁護士会所属
更新日:2025.09.05
離婚時に養育費の取り決めをしないまま別れた人は、実は母子世帯の半数以上。
「今さら請求できるの?」「もう手遅れでは?」そんな不安を抱える方も少なくありません。
でも大丈夫。離婚後からでも養育費を確保できる手段はあります。この記事では、協議書・公正証書・家庭裁判所の調停までの流れや必要書類、不払い時の回収方法、金額算定のポイント、時効の注意点までをまとめ、初心者でも迷わず行動できるよう解説します。
離婚時に養育費の取り決めなしで別れてしまったケースは決して珍しくありません。こども家庭庁の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯で養育費の取り決めをしている世帯は46.7%にとどまり、半数以上が取り決めなしの状態です。しかし、離婚後であっても養育費の請求は可能です。ここでは、その法的根拠と具体的な進め方を解説します。
養育費の請求権は、民法766条1項に基づく親の扶養義務から生じ、この扶養義務は、子どもが経済的に自立するまで負うものです。
なお、条文では「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」と規定されていますが、「離婚時に必ず決めなければならない」という義務ではありません。離婚後であっても協議や調停によって定められるため、取り決めなしで離婚した場合でも、子どもが経済的に自立するまでの間は請求可能です。
実際、家庭裁判所の調停や審判でも、離婚後の養育費請求は日常的に取り扱われています。令和6年の司法統計によると、養育費請求調停の新受件数は毎年2万件超にのぼります。
※出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」
ただし、請求する時期には注意が必要です。過去の養育費については、原則として請求した時点から認められることが多く、離婚時にさかのぼって全額を請求することは困難な場合があります。そのため、養育費が必要だと感じたら、できるだけ早期に行動を起こすことが大切です。
離婚後に養育費を請求する方法は、大きく分けて3つあります。相手との関係性や協力度合いに応じて、最適な方法を選ぶことが成功への近道です。それぞれの方法には特徴があり、必要な書類や手続きも異なります。ここでは、各方法のメリット・デメリットと、どのような場合に選ぶべきかを詳しく解説します。
元配偶者と話し合いができる関係であれば、まず話し合いをして、決まった内容について、合意書を作成する方法が良いでしょう。この場合の合意書とは、養育費の金額や支払い方法について、両者が合意した内容を文書化したものです。
合意書作成のメリットは、費用が安く、手続きが簡単で、短期間で作成できることです。必要なのは紙とペン、印鑑だけで、特別な書式はありません。ただし、後々のトラブルを避けるため、以下の項目は必ず記載しましょう。
・養育費の金額(月額)
・支払い開始時期と終期
・支払い方法(振込先口座など)
・支払日(毎月何日か)
・特別費用の負担(入学金、医療費など)
・面会交流の取り決め(頻度や方法)などです。これらを明確に記載することで、将来の紛争を防ぐことができます。
※養育費の終期については「成人」するまでと記載をすると18歳までの支払いとなってしまいます。「20歳まで」「大学を卒業するまで」などのように、実際に子どもが自立できるまでの間は養育費を貰えるように規定しておく必要があります。
しかし、合意書には法的な強制力がないという大きなデメリットがあります。つまり、相手が支払いを怠っても、合意書だけでは給与の差し押さえなどの強制執行ができません。
そこで、合意書の内容を公正証書にすることを強く推奨します。公正証書は、公証役場で公証人が作成する公的な文書で、「強制執行認諾文言」を入れることで、裁判を経ずに強制執行が可能になります。
公正証書作成の手順は以下のとおりです。まず、最寄りの公証役場に連絡し、作成日時を予約します。当日は両者が公証役場に出向き、公証人の前で内容を確認し、署名押印します。費用は養育費の総額によって異なりますが、一般的に2万円から5万円程度です。
例えば、月額5万円を10年間(総額600万円)支払う契約の場合、目的の価額が500万円超~1000万円以下に該当し、公正証書の基本手数料は1万7000円です。このほか、正本・謄本交付料(1枚250円)や送達費用などが加算され、総額はおおむね2~4万円台となります。この費用を考えても、将来の不払いリスクを考えれば、公正証書化する価値は十分にあります。
※参考:日本公証人連合会「公証人手数料」
ただし、公証役場は、公正証書の作成についてのサポートはしてくれますが、その内容についてのアドバイスなどはしてくれません。どのような内容にすればよいのか不安がある場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。
また、当事者同士だけでは、話し合いが進まない場合でも、弁護士に依頼し、代理人として話し合いをして貰うという方法もあります。弁護士が介在することで、養育費等についての話し合いが進む可能性は高まります。
元配偶者との話し合いが困難な場合や、金額で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停を利用します。調停は、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進める制度で、感情的な対立がある場合でも冷静に協議できるメリットがあります。
調停申立ての手順は次の通りです。まず、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出します。申立書は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。記入内容は、申立人と相手方の氏名・住所、子どもの情報、請求する養育費の金額と理由などです。
申立てに必要な費用は、子ども1人につき収入印紙1200円と、連絡用郵便切手(額や組み合わせは家庭裁判所ごとに異なります)。これは訴訟と比べて格段に安く、経済的負担が少ないのが特徴です。
調停の流れは、申立て後、約1か月後に第1回調停期日が指定されます。調停では、調停委員2名(男女各1名)と裁判官1名で構成される調停委員会が、双方の主張を聞き、合意形成を図ります。通常、3~4回の期日で成立することが多く、期間は3~6か月程度です。
調停のメリットは、裁判所が関与することで相手も真剣に対応せざるを得ないこと、調停調書には強制執行力があること、養育費算定表に基づく適正な金額が期待できることです。
一方、デメリットとしては、時間がかかること、平日の日中に裁判所に出向く必要があること、相手が出席しない場合は不成立になることが挙げられます。ただし、調停が不成立の場合は審判に移行し、裁判官が養育費を決定することも可能です。
養育費の取り決め・請求手続きをスムーズに進めるためには、事前の書類準備が重要です。手続き方法によって養育費の必要書類は異なりますが、共通して必要となる基本書類があります。ここでは、公正証書作成と調停申立てに分けて、具体的な必要書類をチェックリスト形式で整理します。
公正証書を作成する際の養育費必要書類は、協議内容を証明し、当事者を特定するためのものが中心です。以下のチェックリストで準備状況を確認してください。
基本書類
・ 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付きのもの)
・ 印鑑登録証明書と実印(発行から3か月以内のもの)
・ 戸籍謄本(離婚の記載があるもの、子どもとの親子関係が分かるもの)
・ 住民票(現住所を証明するため)
養育費の金額を決めるための参考書類
・ 源泉徴収票または確定申告書の写し(直近のもの)
・ 給与明細書(直近3か月分)
・ 預貯金通帳の写し(資産状況の確認用)
合意内容に関する書類
・ 養育費の協議書案(事前に作成しておくとスムーズ)
・ 振込先口座の情報(通帳の写しなど)
公正証書作成の費用は、養育費の総額(ただし10年を超える場合は10年分)によって段階的に設定されています。例えば、月額3万円を15年間支払う場合でも、計算は10年分の360万円を基準とするため、手数料は11,000円となります。また、月額7万円を10年間(総額840万円)の場合は、手数料17,000円円です。
これに加えて、正本・謄本の作成費用として1枚250円(通常10~20枚程度)、送達費用として約1400円が必要です。総額で3万円から5万円程度を見込んでおけば十分でしょう。
家庭裁判所への調停申立てには、より詳細な養育費必要書類が求められます。これは、裁判所が適正な養育費を算定するために、両者の経済状況や子どもの状況を正確に把握する必要があるためです。
必須書類
・ 養育費請求調停申立書(裁判所のウェブサイトからダウンロード可能)
・ 申立書の写し(相手方送付用)
・ 戸籍謄本(申立人と子ども、相手方の親子関係が分かるもの)
・ 収入印紙1200円分(子ども1人につき)
・ 連絡用郵便切手(裁判所により異なるが、84円切手10枚、10円切手10枚程度)
収入を証明する書類
・ 源泉徴収票(直近のもの)
・ 給与明細書(直近3か月分以上)
・ 確定申告書の控え(自営業の場合)
・ 課税証明書または非課税証明書
・ 生活保護受給証明書(該当する場合)
子どもの状況に関する書類
・ 在学証明書(高校生以上の場合)
・ 医療費の領収書、診断書(持病がある場合)
・ 習い事の月謝領収書(教育費の参考)
・ 保育料の納付書(保育園児の場合)
その他の参考書類
・ 事情説明書(養育費が必要な理由を記載)
・ 陳述書(これまでの経緯を時系列で記載)
・ 相手方の収入を推測できる資料(勤務先の情報など)
調停では、相手方の収入資料の提出も求められますが、相手が提出を拒否することもあります。その場合、裁判所は職権で調査嘱託を行い、役所に課税証明書、勤務先に源泉徴収票の提出を求めることができます。また、相手の収入が不明な場合でも、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)をもとに、職業や年齢、学歴等から推定年収を算出して養育費を決定することも可能です。
書類準備のコツとして、領収書や明細書は日頃から整理して保管しておくことが大切です。特に医療費や教育費に関する領収書は、特別費用の請求時に重要な証拠となります。
養育費の金額設定は、多くの人が悩むポイントです。「いくら請求すれば適正なのか」「相手はいくらなら払ってくれるのか」という不安を解消するため、裁判所では「養育費算定表」という統一的な基準を使用しています。この算定表を理解することで、現実的な養育費の金額を把握できます。
養育費算定表は、最高裁判所の司法研修所が作成したもので、令和元年12月に改訂された最新版が使用されています。この表は、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収、子どもの人数と年齢によって、標準的な養育費の金額を示しています。
算定表の読み方を具体例で説明します。例えば、元夫の年収が500万円(給与所得)、元妻の年収が200万円(給与所得)、子どもが1人(10歳)の場合を見てみましょう。
裁判所のウェブサイトから「表1 養育費・子1人表(子0~14歳)」を選択します。
1. 縦軸で義務者(元夫)の年収500万円を確認
2. 横軸で権利者(元妻)の年収200万円を確認
交点に示される金額帯は「4~6万円」です。
この金額帯の中で、通常は中央値の5万円が基準となります。ただし、これはあくまで標準的な金額であり、個別の事情によって調整されることがあります。
子どもが複数いる場合は、対応する表を使用します。例えば、子ども2人(8歳と12歳)の場合は「表2 養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」を使用し、同じ年収条件なら「6~8万円」(2人合計)となります。
年収の考え方にも注意が必要です。給与所得者の場合は、源泉徴収票の「支払金額」欄の金額を使用します。自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」に実際に支出されていない費用(青色申告特別控除額、減価償却費など)を加算した金額を使用します。
また、算定表には「給与」と「自営」の2つの目盛りがあります。給与所得者は「給与」の目盛りを、自営業者は「自営」の目盛りを使用しますが、両者の税制上の違いを考慮して設定されているため、同じ年収でも金額が異なることがあります。
※養育費算定表の見方については「養育費の計算方法を徹底解説!養育費算定表を正しく使いこなすポイント」のコラムもご確認ください。
養育費算定表の金額は標準的なものであり、個別の事情によって増減されることがあります。ここでは、実務でよく考慮される調整要素を具体的に解説します。
増額要因となる事情
1. 高額な教育費
私立学校の学費や塾代、習い事の費用が標準を大きく超える場合、養育費の増額が認められることがあります。ただし、私立学校の学費については、事前に両親の合意があったか、支払う側の収入や学歴から見て相当と認められる必要があります。
例えば、私立中学校の年間学費が100万円の場合、公立中学校との差額約90万円を月割りにした7万5000円の一部(通常は半額程度)が、算定表の金額に加算される可能性があります。
2. 医療費の負担
子どもに持病があり、継続的な医療費がかかる場合は、その実費の一部が加算される可能性があります。例えば、アトピー性皮膚炎の治療で月1万円の医療費がかかる場合、その半額の5000円程度が養育費に上乗せされることがあります。
3. 住居費の特別事情
養育する側が実家暮らしなどで住居費がかからない場合と比べ、賃貸住宅で高額な家賃を支払っている場合は、その差額の一部が考慮されることがあります。
減額要因となる事情
1. 面会交流の宿泊を伴う実施
面会交流で子どもが定期的に宿泊する場合、その間の生活費相当額が減額されることがあります。例えば、月2回の週末(計4日)宿泊する場合、月額養育費の10%程度が減額される可能性があります。
2. 支払う側の再婚と扶養家族の増加
支払う側が再婚し、新たな扶養家族ができた場合、扶養義務の分散により養育費が減額されることがあります。ただし、自動的に減額されるわけではなく、調停や審判による変更が必要です。
3. 受け取る側の収入増加
受け取る側の収入が大幅に増加した場合、養育費の減額が認められることがあります。ただし、子どもの生活水準を維持する観点から、単純な比例計算ではなく、総合的に判断されます。
これらの調整を行う際は、必ず証拠となる資料(領収書、契約書、診断書など)を準備することが重要です。また、一度決めた養育費も、事情の変更があれば調停により変更することが可能です。
※養育費の増額・減額については「養育費の増額・減額請求は可能?調停など裁判所の判断基準とは?」のコラムもご確認ください。
養育費の取り決めをしても、実際に支払われないケースは残念ながら少なくありません。厚生労働省の調査では、養育費を現在も受け取っている母子世帯は28.1%(出典:こども家庭庁「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」)にとどまります。しかし、適切な法的手段を取ることで、養育費の回収は可能です。ここでは、段階的な回収手段を具体的に解説します。
調停や審判で養育費が決まったにもかかわらず支払いがない場合、まず家庭裁判所の「履行勧告」を利用します。これは、裁判所が支払い義務者に対して、養育費を支払うよう促す制度です。
履行勧告の申し出は、調停や審判を行った家庭裁判所に対して行います。申し出は口頭でも可能で、費用は無料です。裁判所は義務者に電話や書面で連絡を取り、支払いを促します。多くの場合、裁判所からの連絡により、相手は支払いを再開します。
履行勧告でも効果がない場合は、「履行命令」の申立てを検討します。履行命令は、裁判所が相当の期限を定めて養育費の支払いを命じる制度で、より強い法的効力があります。
履行命令の最大の特徴は、命令に違反した場合のペナルティです。正当な理由なく命令に従わない場合、10万円以下の過料に処せられます。この過料は、支払いを怠るたびに科すことができるため、継続的な不払いに対する抑止力となります。
履行命令の申立てには、申立書の提出と収入印紙500円が必要です。申立書には、これまでの不払いの経緯と金額を明確に記載します。例えば、「令和○年○月から○月まで、月額5万円×6か月分=30万円が未払い」といった具体的な記載が必要です。
実際の効果として、履行勧告や履行命令は、家庭裁判所を通じて不払いに対処する有効な制度です。
履行勧告や命令でも支払いがない場合、最終手段として「強制執行」による給与差押えを行います。これは、相手の勤務先に対して、給与から養育費相当額を天引きして直接受け取る制度です。(相手方の銀行口座がわかっており、現金があることが明確な場合、相手方の銀行口座の差押え等も可能です。)
給与差押えの最大のメリットは、確実性・継続性です。差押命令を受けた勤務先(第三債務者)には、法的に命令に従う義務があります。勤務先が履行しない場合、裁判所を通じた対応が可能です。
養育費の給与差押えには、一般の債権とは異なる特別な優遇があります。民事執行法では、通常の債権は給与の4分の1までが差押え可能ですが、養育費などの扶養義務に基づく債権は給与の2分の1まで差押えが認められます。
例えば、手取り月収30万円の相手なら、最大15万円まで(ただし、未払となっている範囲に限る)差し押さえることができます。
※出典:e-Gov「民事執行法第152条」
強制執行の手続きは、地方裁判所に申し立てます。必要書類は以下のとおりです。
・ 債務名義(調停調書、審判書、公正証書など)
・ 送達証明書(相手に書類が送達されたことの証明)
・ 執行文(公正証書の場合)
・ 申立書と当事者目録、請求債権目録、差押債権目録
・ 収入印紙4000円と郵便切手約3000円分
公正証書がある場合の大きなメリットは、調停や裁判を経ずに直接強制執行ができることです。これにより、時間と費用を大幅に節約できます。通常、調停から強制執行まで6か月以上かかるところ、公正証書があれば1~2か月で給与差押えが可能です。
ただし、相手方が転職した場合は、新しい勤務先を特定する必要があります。2020年4月の民事執行法改正により、裁判所を通じて市町村や年金事務所に照会し、相手の勤務先情報を取得できる「第三者からの情報取得手続」が創設されました。この制度により、相手が転職しても養育費の回収可能性が高まりました。
差押えの効果は絶大で、一度差押えが始まると、相手は自主的に支払いを再開することが多いです。また、将来分の養育費についても継続的に差押えができるため、毎月確実に養育費を受け取ることができます。
※養育費請求の具体的な対応策については「養育費が支払われない場合の延滞金・時効は?法律上の請求期限と対応策」のコラムもご確認ください。
養育費には時効があることをご存知でしょうか。せっかく請求できる権利があっても、時効により消滅してしまうことがあります。また、離婚後しばらく経ってから養育費を請求する場合、過去分はどこまで請求できるのでしょうか。ここでは、時効の仕組みと過去分の取り扱いについて、実務的な観点から解説します。
養育費の消滅時効は、どのような形で取り決めたかによって異なります。2020年4月1日の民法改正により時効期間が短縮されたため、取り決めの時期によっても扱いが変わります。
確定した債務名義がある場合
判決・審判・調停調書など、裁判所が作成した確定的な債務名義に基づく養育費債権の消滅時効は10年です。起算点は各月の支払期限であり、例えば毎月末日払いの場合、その月末から10年経過すると当該月分は時効により消滅します。ただし、その時点で発生していない将来分の養育費は、
公正証書による取り決め
公正証書で養育費を取り決めた場合、時効期間が5年となります。
協議書や口約束による養育費
協議書や口約束など、公的効力を持たない取り決めによる養育費は定期給付債権として扱われ、5年の時効期間が適用されます(民法第166条第1項第1項)。
重要なのは、養育費は月々の支払いごとに独立した債権として扱われることです。例えば、令和2年1月分の養育費と令和2年2月分の養育費は別々に時効が進行します。
例えば、平成27年に調停で月5万円の養育費が決まり、一度も支払われていない場合を考えてみましょう。令和7年(2025年)1月に請求する場合、平成27年1月分から令和2年(2020年)12月分までは5年の時効により消滅していますが、令和3年(2021年)1月分以降は請求可能です。
過去分の養育費については、実務上重要な点があります。現在の家庭裁判所の実務では、過去の未払い養育費は養育費請求調停や審判では認められないのが通常です。つまり、離婚から5年後に初めて養育費を請求した場合、原則として5年前にさかのぼって請求することは困難です。
ただし、例外的に過去分が認められるケースもあります。相手が養育費の支払いを約束していたにもかかわらず支払わなかった場合、子どもの監護に著しい困難があった場合、相手の所在が不明で請求できなかった場合などです。これらの事情がある場合は、事情を詳細に説明する陳述書、そのことを裏付ける客観資料等を準備することが重要です。
時効の完成を防ぐためには、時効の「更新」(旧民法では「中断」)という手続きが必要です。時効の更新により、それまでの時効期間がリセットされ、新たに時効期間が始まります。
時効更新の方法
1. 裁判上の請求
最も確実な方法は、支払督促や訴訟提起です。支払督促は簡易裁判所に申し立てることができ、費用も訴訟の半額で済みます。相手が異議を申し立てなければ、そのまま強制執行も可能になります。
2. 承認による更新
相手が養育費の支払い義務を認めれば、時効は更新されます。具体的には、一部でも支払いがあった場合、支払いの猶予を求めてきた場合、「支払います」という書面をもらった場合などです。
実務的なテクニックとして、LINEやメールで「養育費はいつ払ってもらえますか?」と連絡し、「もう少し待ってください」「来月には払います」といった返信をもらうことで、承認による時効更新が成立する可能性があります。この際、やり取りのスクリーンショットを必ず保存しておきましょう。
3. 履行勧告による時効の完成猶予
家庭裁判所の履行勧告を申し出ると、6か月間時効の完成が猶予されます(民法151条)。この間に、支払督促や調停を申し立てることで、時効の更新につなげることができます。
定期的な管理の重要性
養育費の時効管理には、エクセルなどで支払い状況を記録することをお勧めします。以下の項目を管理しましょう。
・支払予定日と実際の支払日
・支払金額(一部支払いの場合はその金額)
・未払い金額の累計
・相手との連絡記録(日付と内容)
・時効完成予定日(各月ごと)
重要なのは、時効完成の1年前にはアラートを設定し、時効更新の手続きを開始することです。10年の時効でも、あっという間に期限が来てしまいます。
また、相手からの支払いが一部でもあった場合は、必ず領収書を発行し、控えを保管してください。銀行振込の場合は、通帳の該当ページをコピーまたは写真撮影しておきます。これらは時効更新の重要な証拠となります。
※養育費の時効と時効を止める方法については「未払養育費の時効は5年?10年?時効を止める方法と、時効で諦めないためには?」のコラムもご確認ください。
養育費の問題は、一人で抱え込まず、専門家の助けを借りることで解決への道筋が見えてきます。しかし、「弁護士費用が高そう」「どこに相談すればいいかわからない」という不安から、相談をためらう人も多いでしょう。ここでは、費用を抑えながら専門的なサポートを受ける方法を詳しく解説します。
・各法律事務所(弁護士)
・法テラス
・自治体の無料相談窓口
・弁護士会の法律相談センター
など
いずれも、相談できるのは弁護士です。弁護士に相談することで、あなたにとって最適な解決方法を知ることができます。
また、弁護士に依頼するメリットには以下のようなものがあります。
1.未払い分の回収可能性が高まる
弁護士に依頼すると、非親権者(支払う側)への養育費支払いの説得や、強制執行など法的手段を活用して未払い分を回収できる可能性が高くなります。特に強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、裁判を起こさずに差押えなどの手続きを行うことも可能です。
2.精神的負担やストレスの軽減
養育費の話し合いは感情的になりやすく、当事者同士だと交渉が難しい場合があります。弁護士が代理人として交渉を行うため、感情的対立を避けられ、精神的な負担が軽減されます。
3.適切な解決方法の提案が受けられる
弁護士は法律の専門家として、各ケースに応じた最適な請求・回収方法(調停・裁判・強制執行など)をアドバイスします。自分で手続きや交渉を進めるよりも、効果的な問題解決が期待できます。
4.手続きや交渉を一任できる
裁判所の調停や裁判といった複雑な手続き、相手方との交渉などを専門家に任せることができ、時間や労力を大幅に節約できます。
5.将来的なトラブル防止
養育費の取り決めを公正証書などの法的文書で残し、強制執行の準備も整えておくことで将来の未払いリスクを抑えられます。弁護士は、こうした先を見越した対策も提案してくれます。
費用の面の除けば、弁護士に依頼することはメリットが大きいといえるでしょう。
法テラスは、経済的に余裕がない人でも法的サービスを受けられるよう、国が設立した機関です。
法テラスの無料法律相談
収入と資産が一定基準以下の場合、同一問題について3回まで無料で弁護士に相談できます。1回の相談時間は30分程度です。相談は予約制で、最寄りの法テラスまたは法テラスと契約している弁護士事務所で受けられます。
収入と資産が一定基準以下の場合、同一問題について3回まで無料で弁護士に相談できます(1回30分程度、要予約)。相談は最寄りの法テラスや契約弁護士事務所で受けられます。
資力基準は毎年度改定されます。世帯人数ごとの月収・資産の上限額は、法テラス公式サイトで最新情報を確認してください。基準をわずかに超えていても、養育費や住宅ローンなど特定の支出は収入から控除できるため、実質的に多くのひとり親家庭が利用可能です。
参考:法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」
民事法律扶助制度(費用立替)
法テラスでは、弁護士費用の立替制度も用意されています。調停や訴訟の代理人費用を法テラスが立て替え、利用者は月5000円~1万円程度の分割払いで返済します。生活保護受給者の場合、返済が免除されることもあります。
立替の対象となる費用
・ 着手金:10万~20万円程度(養育費請求の場合)
・実費:2万~5万円程度(印紙代、切手代など)
自治体の無料相談窓口
多くの自治体でも、養育費相談の窓口を設けています。例えば、東京都では「ひとり親家庭支援センター」で、養育費専門相談員による相談を受けられます。相談は無料で、電話相談も可能です。
また、養育費・親子交流相談支援センターでは、電話やメールで全国どこからでも相談できます。フリーダイヤル(0120-965-419)で、平日と土曜日に相談を受け付けています。
弁護士会の法律相談センター
各都道府県の弁護士会でも、30分5,500円程度で法律相談を実施しています。初回相談無料のキャンペーンを行うこともあるため、ウェブサイトで確認することをお勧めします。
※参考:弁護士会の法律相談センター
法テラスや、自治体、弁護士会では、相談までは無料でできるケースが多いです。
ただし、その後に依頼をする場合は、着手金などが必要となります。
私たちホライズン法律事務所は、養育費問題の解決に注力しています。また、養育費費の問題に悩む皆さまの経済的負担を極力なくしたいという強い思いから、独自の料金体系を採用しています。
まず、相談は完全無料です。養育費の問題は、お金の心配をせずに気軽に相談できることが重要だと考えています。初回相談だけでなく、2回目以降の相談も無料ですので、じっくりと検討いただけます。相談は対面だけでなく、LINEのメッセージ、電話等でも対応可能です。お仕事や育児で忙しい方でも、スキマ時間を活用してLINEメッセージ等にてご相談いただけます。
そして最大の特長は、完全成功報酬制を採用していることです。着手金は一切いただきません。万が一、養育費の回収ができなかった場合は、費用は完全にゼロ円(無料)です。つまり、依頼者の方には一切の金銭的リスクがありません。
この料金体系を採用している理由は、養育費の未払いに悩むひとり親の方々が、経済的な不安から弁護士への依頼をためらうことがないようにしたいと思っているからです。「弁護士費用を払って、結局養育費が取れなかったらどうしよう」という心配は不要です。私たちが養育費を回収できた場合にのみ、回収額の一部を報酬としていただく仕組みとなります。
さらに、当事務所では1200人以上のひとり親の方々から養育費回収のご依頼を受け、実際に養育費を回収してきた豊富な実績があります。この経験から、どのような状況でも最適な回収方法を提案できます。公正証書の作成から、調停・審判の代理、強制執行まで、すべての手続きをワンストップで対応いたします。
手続きの進め方も、依頼者の負担を最小限にすることを心がけています。必要書類の準備から裁判所への提出まで、ほとんどの手続きを当事務所で代行します。依頼者の方は、スマートフォンで必要な情報を提供いただくだけで、手続きを進めることができます。
弁護士に依頼することで、元配偶者と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担から解放されます。また、法的知識と交渉技術により、自分で交渉するより有利な条件を引き出せる可能性が高まります。書類作成や裁判所とのやり取りもすべて任せられるため、仕事や育児に専念でき、不払いの際も速やかに強制執行手続きを進めることができます。
養育費の取り決めがない方も、すでに未払いが発生している方も、まずは無料相談から始めてみませんか。金銭的リスクは一切ありませんので、安心してご相談ください。
離婚時に養育費の取り決めなしで別れてしまった。その事実に今、不安を感じているかもしれません。しかし、この記事で解説してきたように、離婚後であっても養育費の請求は十分可能です。
大切なのは、「もう遅い」と諦めないことです。民法766条という法的根拠があり、家庭裁判所における裁判手続という選択肢があり、そして多くの方々が養育費を獲得してきた実績があります。
養育費は子どもの権利です。それは、子どもが両親の愛情と経済的支援を受けて健やかに成長するための、当然の権利なのです。
1. 現状を把握する
まず養育費算定表で標準額を確認してください。月額5万円の養育費なら、子どもが20歳になるまでの10年間で600万円。この金額が、子どもの教育や生活にどれだけ大きな違いをもたらすか想像してみてください。
2. 必要書類を準備する
戸籍謄本と収入証明書があれば、手続きの第一歩を踏み出せます。完璧な準備を待つ必要はありません。まず動き始めることが重要です。
3. 専門家に相談する
一人で悩む必要はありません。法テラスの無料相談、自治体の相談窓口、そして養育費問題に特化した法律事務所。あなたをサポートする仕組みがたくさん用意されています。
厚生労働省の調査では、養育費の取り決めをしている母子世帯は約4割。つまり、半数以上の方が同じような状況からスタートしています。ただし、過去分の養育費については、家庭裁判所の実務では認められるケースは限定的であるため、早期の対応が重要です。
元配偶者との交渉が不安、手続きが複雑で分からない、仕事と育児で時間がない。そんな悩みは当然です。だからこそ、専門家の力を借りることが大切なのです。
特に、公正証書や調停調書があれば、不払いの際も給与差押えという強力な手段が使えます。月々の養育費が確実に振り込まれる安心感は、あなたと子どもの生活に大きな余裕をもたらします。
養育費の問題でお悩みのあなたへ。私たちホライズン法律事務所は、未払養育費を社会課題として捉え、この問題の解決に注力しています。
相談は完全無料。万が一、養育費を回収できなかった場合も費用はゼロ円です。1200人以上のひとり親の皆さまに寄り添い、養育費を回収してきた実績があります。スマートフォンだけで手続きがほぼ完結し、元配偶者との交渉はすべて弁護士が代行します。
「取り決めなし」でも「離婚後」でも、今この瞬間から、あなたと子どもの未来は変えられます。まずは無料相談から、小さな一歩を踏み出してみませんか。金銭的リスクは一切ありません。
あなたの勇気ある一歩が、子どもの笑顔につながります。私たちが全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
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