更新日:2024.10.11
養育費の金額はいくらになるのか?これはとても多いご質問です。ある程度、相場感はありますが、さまざまな要素で、養育費の金額は変わってきます。そこで平均的な金額をご紹介するとともに、判例とともに平均的な金額からズレる考慮要素をご紹介いたします。
養育費の状況については、厚生労働省が定期的に調査を行っており、直近のデータでは、「 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」として報告がまとめられています。
この「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によれば、
月額養育費は、全体で見ると
・母子世帯の場合50,485 円/月
・父子世帯では 26,992 円/月
となっています。
また、子どもの人数別で同じデータを確認すると次のようになります。
子ども1人の場合
・母子世帯:40,468円/月
・父子世帯:22,857円/月
子ども2人の場合
・母子世帯:57,954円/月
・父子世帯:28,777円/月
子ども3人の場合
・母子世帯:87,300円/月
・父子世帯:37,161円/月
子ども4人の場合
・母子世帯:70,503円/月
・父子世帯:ー円/月(データなし)
子ども5人の場合
・母子世帯:54,191円/月
・父子世帯:ー円/月(データなし)
であるとされています。
子どもの数が3人になるまでは、子どもの人数が増えるごとに、養育費の月額は大きくなる傾向にあります。
一方で、4人以降で減少傾向にあるのは、養育費の月額の決まり方に要因がある可能性があります。
養育費の金額は、基本的には、(元)夫と(元)妻の話し合いによって決まるものですが、目安になる金額は決まっています。
養育費の目安となる金額は子どもが1人~3人の場合
裁判所のウェブサイトにある算定表を用いると簡単に計算することができます。
裁判所ウェブサイト
「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
この中で判断の軸になるのは大きく分けて次の6点です。
・義務者の年収
・義務者が給与所得者か自営業者か?
・権利者の年収
・権利者が給与所得者か自営業者か?
・子どもはいるか?何人いるか?
・子どもの年齢は何歳か?(0歳~14歳か、15歳以上か?)
以下に、もう少し詳しく解説します。
・義務者の年収
・義務者が給与所得者か自営業者か?
養育費を計算する際に出てくる義務者とは、多くの場合、(元)夫側を指します。
義務者は、義務者本人と同レベルの生活を子どもに提供する義務があります。(民法766条1項)
また、収入に関しては、年収から税金や必要経費、各種控除などを差し引いた「基礎収入」という概念を用いるため、義務者が、サラリーマンのような「給与所得者」なのか、法人の経営者や個人事業主のような「自営業者」かも確認する必要があります。
・権利者の年収
・権利者が給与所得者か自営業者か?
養育費を計算する際に出てくる権利者とは、多くの場合、(元)妻側を指します。
また、収入に関しては、義務者同様に「基礎収入」という概念を用いるため、権利者についても、サラリーマンのような「給与所得者」なのか、法人の経営者や個人事業主のような「自営業者」かも確認する必要があります。
・子どもはいるか?何人いるか?
・子どもの年齢は何歳か?(0歳~14歳か、15歳以上か?)
養育費は、子どもの人数や年齢によっても変わってきます。
上述の裁判所ウェブサイト
「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
では、参照すべき表が、子どもの人数と、年齢(0歳~14歳か、15歳以上か?)によって変わってきます。
従って、ご紹介した6点
・義務者の年収
・義務者が給与所得者か自営業者か?
・権利者の年収
・権利者が給与所得者か自営業者か?
・子どもはいるか?何人いるか?
・子どもの年齢は何歳か?(0歳~14歳か、15歳以上か?)
をご確認いただき、表を参照することで、養育費の相場金額を算出することができます。
なお、算定表の具体的な見方については、こちらの記事でも解説しておりますので、ぜひ、ご参照ください。
「弁護士解説┃養育費は、いくら貰える?相場は?年収400万円、800万円、1000万円などケース別にも解説」
また、インターネット上には、養育費の計算を簡単に計算できるシミュレーターもあります。
上述の裁判所が公開している算定表は子どもの人数が3人までに限定されていますので、子どもの人数が4人以上いる場合や、表を参照するのが面倒な場合は、シミュレーターを使ってみるという方法も考えられます。
法律事務所が運営しているウェブサイトにある養育費計算のシミュレーターであれば、信用できる可能性が高いといえますので、「養育費 計算 シミュレーター」などで検索のうえ、計算してみてください。
では、次に実際の母子家庭では、いくらの養育費が貰えているのかを確認してみましょう。
先ほど、ご紹介した母子世帯で貰えている養育費50,485 円/月は、「養育費を現在も受けている又は受けたことがある世帯のうち額が決まっている世帯の平均月額」を基に計算されたものです。
しかし、全ての母子家庭で、養育費を貰えているわけではありません。
養育費は、子どものために必ず支払わなければならないという性質のお金ですが、実は統計上、養育費を貰えている家庭は、わずか28.1 %と3割以下に留まっています。
つまり、70%以上の多くの母子家庭では、そもそも養育費の支払が0円であるという状況に陥ってしまっています。
この問題は、大きな問題です。女性の貧困という問題に繋がり兼ねないほか、この国の宝である、子ども達から教育の機会をうばいかねない問題だからです。
このような背景があるため、私たちホライズン法律事務所は、未払養育費という社会問題を解決すべく、日々、尽力しております。
さきほど、養育費を貰えていない母子家庭が約70%も存在するという事実をご紹介させていただきました。
そこで、ここでは、逆に、きちんと養育費を支払ってもらうためにやるべきことをご紹介させていただきます。
結論から申し上げると、離婚時に注意すべきポイントは
・養育費について、将来を見越して、細かな点まで、きちんと決めておくこと
・養育費について決めた内容を、公正証書などの公的な書類にまとめておくこと
の2点です。
まず、必ず、やっておいていただきたいことは、養育費について、将来を見越して、細かな点まで、きちんと決めておくことです。
離婚をする際に、どのような条件で離婚をするのかを決めるかと思いますが、このときに、将来の養育費についても、きちんと話し合いをして決めておきましょう。
また、その内容については、うやむやにせずに細かい点まで決めておくことが必要です。
例えば、
・養育費の金額(月額など)
・支払い期日
・支払い方法
・支払い期間(いつまで支払うか)
などを決める必要があります。
・養育費の金額(月額など)
養育費の金額は、月額○円と決めておきましょう。また、子どもの成長とともに必要となる養育費は変わってきますし、進学をする場合には学費も必要になりますので、そのあたりについても決めておくと良いでしょう(たとえば、学費は2分の1ずつの負担とする等)。
・支払期日
・支払方法
例えば、「毎月末日までに、金○○万円を、○○銀行 ○○支店 ○○口座 ○○○○に振込の方法で支払う。」、「振込手数料は○○の負担とする」といったように、いつまでに、いくらを振り込むのか、また、振込手数料はどちらが負担するのか、といった点まで決めておくと良いでしょう。
・支払い期間(いつまで支払うか)
支払期間はいくつかのパターンがあります。例えば、成人するまでとするケースが最も多いパターンです。ただし、現在は成人年齢が18歳となっており、成人までと決めてしまった場合、大学の学費を支払って貰えない可能性があります。そこで、養育費の支払期間を大学を卒業するまで(22歳以降最初に到来する3月とする場合も多いです)とする方法などが考えられます。
また、海外に留学する可能性や、大学院まで進学するケースも考えることができます。
実際に、裁判でも、いつまで養育費を支払って貰えるのかは、たびたび論点になります。
子どもの選択肢を多くするためには、できるだけ、長期間支払って貰えるようにしておいた方がいいといえますが、ここは元パートナーの資力なども関係してくる点ですので、慎重に交渉を重ねると良いでしょう。
なお、裁判例上、比較的長期間養育費を支払って貰えるケースは、親の収入が高いケースや、親も大学院を卒業しているなど、親自身の学歴・収入も高いケースが多いです。
養育費について、将来を見越して、細かな点まできちんと決めることができたら、しっかり書面にまとめておきましょう。
さらに、養育費について決めた内容を、公正証書などの公的な書類にまとめておくことも重要なポイントです。
公正証書とは 、元裁判官などが務める公証人という公務員が、その権限に基づいて作成する公文書のことです。
公正証書があることで、相手方が養育費の支払をしないなど約束を守らなかった場合、速やかに強制執行手続きなどを取ることができます。
通常は、強制執行をしたいと考えた場合
①訴訟や調停などの裁判手続きを行う
②和解調書、判決書、調停調書など=債務名義(強制執行をするための切符のような役割を果たす書類)を獲得する
③強制執行の申立てを行う
という3つのステップが必要となります。
一方で、公正証書を作成しておくと、公正証書自体が債務名義となるため、訴訟や調停という裁判手続きをせずとも、強制執行ができるようになります。
費用もかかりますし、面倒に思うかもしれませんが、母子家庭の約70%が養育費の支払を受けられていないという状況を考えると、公正証書にするという手続きも必ずやっておいた方が良いといえるでしょう。
また、併せて定期的に確認しておきたいことは、元パートナーの勤務先や、利用している銀行口座などの情報は定期的に確認しておくと良いでしょう。これは、万が一、支払が滞った場合に、勤務先や銀行口座を差し押さえやすくなるからです。同情報が分からない場合には、財産開示手続・情報取得手続等により、差し押さえる対象を調査する方法もございますので、ご安心ください。
なお、元夫や元パートナーが法人の経営者や自営業者の場合は、その取引先の情報などを知っておくと、有利になる可能性があります。
一方で、このような交渉や、書面にまとめる方法がわからないという方は少なくありません。そのようなケースは、弁護士に相談・委任することで解決することができるでしょう。
ここまで、平均的な養育費の金額や、その人数別のデータ、養育費が決まるロジックなどをご紹介してきました。
ただし、これらはあくまでも平均的なデータであり、個別具体的な事情によって養育費の金額は増減します。
そこで、過去の裁判例などを参考に、養育費の金額が増減する条件を、ケース別にご紹介いたします。
養育費の金額を決める際は、上述のとおり、双方の収入を基に算出します。
ここで、義務者(多くは元夫側)の一部は、一部の収入を隠したり、教えなかったりするという手段を取るケースがあります。
正しい情報を入手するために、必要になるのが収入を証明する書類などです。一般的には、会社員の場合「源泉徴収票」、自営業者や法人等経営者などの場合「確定申告書の控え」がこれにあたります。
ただし、副業の分を申告していないケースなどもあるため、より正確な情報を得るためには、市区町村が発行する「課税証明書」を確認するという方法が考えられます。(課税証明書も100%正しい情報とはいえないケースも考えられます。)
ただ、課税証明書は、原則として本人でなければ取得できず、配偶者であっても取得するためには本人が作成した委任状が必要となります。それゆえ、課税証明書を取得したい場合は、裁判所を通した文書送付嘱託などの手続きをとることが必要になります。
交渉時においては、相手方が収入を証明する資料を提出しない場合は、生活水準から推測をしたり、賃金センサス(政府が、賃金について、就業形態、職種、性、年齢、学歴などについて取りまとめた統計)を用いて推計する方法があります。
所得が高額でない場合は、賃金センサスを基に相手方の収入を基に算出した方が実際の収入よりも金額が大きくなるケースがありますので、「賃金センサスを基準にして、裁判所に、決めてもらう」と伝えることで、相手方が資料を提出するケースもあります。
また、実際に、相手方が収入に関する資料を提出せず、調停にも出頭しなかった相手方に対して賃金センサスを用いて収入を認定した事例(平8・9・30宇都宮家審)、親族の経営する会社に務めており提出した収入資料に疑問があることから賃金センサスを用いて収入が認定された事例(大阪高決平16・5・19月57・8・86)などがあります。
弊所においても、賃金センサスによる収入認定をしてもらったケースは非常に多いです。
管理職になると、超過勤務手当などが出なくなることがあります。この事例は、義務者が課長職への昇格により超過勤務手当が出なくなること、対象となる年度の賞与が減少(サブプライムローン等の影響があった時期)したことを理由に婚姻費用の前提となる収入の額を、前年度の少ない収入に基づいた収入にすべきと主張した事例です。
これに対して、裁判所は、義務者の年収が過去4年間は右肩あがりであり、ベースとなる月給は増加していること、課長職に昇格していることなどを理由に、義務者の主張を退けています。
この事例は養育費ではありませんが、類似の事例としてご紹介します。
背景事情として夫は会社を経営しており、その従業員と不倫関係にあり、勝手に自宅を出ていました。妻は、代理人弁護士を通して不倫関係の解消や会社からの退職を求めていましたが、夫側は、妻と家族が住んでいた場所を社宅としていることなどを理由に契約を解除すると伝えて退去させていたという事情があります。
このような背景の中、裁判所は、なんの落ち度もなく、自宅を追い出された妻子に対し、住居費を単独で負担させるのはあまりに酷であると判断し「標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき、収入比で按分して負担すべき義務があると定めるのが公平にかなうというべきである。」と判断しています。
この事例では、婚姻費用の算定において、子の私立高校の学費を考慮すべきとした上で、既に標準的算定方式において考慮されている公立高校の学校教育費相当額を超過した金額を権利者・義務者で2分の1ずつ負担するのが相当とし、これを標準的算定方式で算定した婚姻費用に加算すべきと判断しました。
この事例では、裁判所は「大学進学の了解の有無、支払義務者の地位、学歴、収入等を考慮して負担義務の存否を判断すべきである。」として、私立大学の学費については養育費に加えて支払義務を負わせるのは相当でないと判断しています。
しかし、一方で、義務者は大学への進学を了承はしていなかったものの、反対をしていたとは認められないとして、義務者の地位や経済状況などに照らし、義務者には子ども「大学に進学するのに通常必要とする期間、通常の養育費を負担する義務がある」とし、子どもが満22歳に達した後の最初の3月まで、月額55,000円の養育費の支払いを命じるのが相当と判断しています。
いかがでしたか?養育費について、子どもの人数別に、平均的にいくら支払って貰えるかをご紹介するとともに、養育費をきちんと貰えるようにやっておくべきこと、また養育費が平均額がズレる考慮要素を裁判例をベースにご紹介させていただきました。
この記事でご紹介したとおり、養育費は、必ず支払われるべきものであると法律でも決められている一方で、実際に受け取れている母子家庭は、非常に少ないのが現実です。
また、実際の養育費の金額は、それぞれの家庭の事情により増減するため、専門家へ相談しないと、正しい数字は算出できないというのが実態です。
私たち、ホライズン法律事務所は、未払養育費の問題を社会課題であると捉え、この問題を解決することに注力しております。
ホライズン法律事務所の未払い養育費に関する5つの特長
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